一生に二度の初恋を『あなたへ』
・よみがえる過去
「いってきます」
「いってらっしゃーい」
土曜日の朝早い時間に、リビングからでも玄関に聞こえるようにとお腹から声を出して、わたしとお母さんの挨拶はいつも家中に響き渡っている。
ソファーから身体を起こしたわたしは、お母さんが出て行くと体重を一気に預けて寄りかかった。
そしてつきっぱなしだったテレビを虚ろな目で見る。
まだ眠い……。
最近大分眠れるようにはなってきた。
あの手紙のことを考えて眠れなくなることももうなくなったし『大丈夫か?』って斎藤くんに心配そうに声をかけさせるのは嫌だから。
まぁ一番嫌なのは授業についていけなくなることだけど。
テレビの左上の時計がちょうど九時をさして、違う番組に切り変わる。
このチャンネル九時から面白くないから消そうかな。
一瞬で黒くなって消えたテレビ。
一気に家は静まりかえった。