Short Funny
「ちなみに、おじさんの案ってどんなだったの?」


少年は淡々と私に尋ねる。


「私の案かい?」


開発都市内では高層マンションの販売が激化していた状況で、営業力が劣位にあった私達は同じ建築様式に拘っては敵わないと判断した。

つまり、外観や便利さを追求する構造だけでは勝てないとね。


まあ、セキュリティーや高層化によって景観を楽しむことは、計画からは決して外せなかったが…。

「私達は水と緑にこだわることにしたのさ」


「へえ」


少年の薄い反応が気になるが、私の話は止まらない。


玄関を抜けると、広いロビーには大きな植樹があって、住民はその拡がった枝の下を通行するのさ。

植樹の葉は季節ごとに色を変え、マンションの中で四季を感じることが出来る。

通路には水路を設置して、澄んだ綺麗な水が走り、派手な魚達が流麗に泳ぐ。


5の倍数の階では、その水路の水を利用して、美しい花や果物、野菜が栽培される。


高層で外観も近未来的だけど、自然と調和出来る、そんな空間を作りたかったのさ。
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