カンナの花
序
まず前置きをすることをお許しいただきたい。
わたしは大学で日本文学科に学んでいながら、小説を書くのが下手である。
別に日本文学科は作家養成コースではない。
だから必ずしも小説が書けなくてもよいのだろうが、わたしの周りには趣味で書いている人が多く、みんなの才能にはいつも驚かされる。
しかし、わたしはレポートやエッセイを書くのが得意だ。
実際の出来事を追ったルポ記事やインタビュー記事なんかは、高校や大学の新聞部で鍛えただけあって、小説よりは少しだけ自信がある。
この度わたしは、ある魅力的な少女について小説を書こうと思った。
わたしの親友である彼女は、一癖も二癖もある個性派だけれど、まっすぐで友達思いで、何より芯は強い。
ただなんせ下手な小説しか書けない。
だったらいっそのこと、ルポルタージュの形式でいいかとわたしは割り切った。
この試みがうまくいくのかどうかはまだわからないけれども、とりあえず最後まで書き切ってみようと思う。
わたしとカンナ、それぞれの悲しい記憶を乗り越えるために。
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