カンナの花




嫌ならやめるよ。

わたしを腕に抱いたまま、しばらくしてから彼は言った。


想いと理性が逆を行く。こんなのよくないに決まってる。でもいやだ、離さないで。ずっとこの手を離さないで。……しかしまだ理性のが優勢だった。


やめましょうよ。


そう言って体をまっすぐに起こした。けれど、彼はつまらなそうな顔でわたしを見る。肩の手は外れない。


わたしだって、わたしだって離れたくない。本当は。

そう思うと、彼の視線に耐えきれなくて、わたしは俯いた。



ねぇ、こっち見て?



抵抗できないわたしをからかうように彼は言う。手を肩から外し、俯いたままのわたしの頭に伸ばして、彼の方を少し無理に向かされる。



彼は、ほーら、と言いながら。
わたしを熱い目で見ていた。


あとから思えば、彼の顔も全体に赤かった気がする。


や!無理!


そう言って顔を無理に背けたけれど、あの目をもっと見たいという気持ちに駆られる。


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