カンナの花
わたしの隣に彼がいた。ふたりでアイスを食べてそして…いちゃいちゃした。
思い出す、という言葉よりもずっと生々しく、彼の気配が蘇る。
無駄に何回も、脳内で再現フィルムが流れた。何回ループしても飽きなかった。
そうして眠りは浅いまま時間は過ぎる。やがて空が明るくなってきて、目覚ましが鳴ったので、潔く諦めて起きた。
時間を持て余したわたしは、もし今日会えたならば、意識してほしい、かわいいって思ってほしい、そう思って、髪に編み込みを施した。
昨日の夜のことは誰も知らない。
なのに、教習所に着いてから、周りから変態だと思われているのではないかと疑心暗鬼になった。
夕べのことは知られてなくても、昨日ロビーでずっと話していたのは見られている。髪型もいつもと違うし、色気づいていると思われていたら嫌だな───。
すべてを忘れたくて授業に没頭しているふりをしたし、技能の時間の最中も教官と世間話を咲かせた。
会いたくないけど、会いたい。
でもどんな顔をしていいやら。
会いたい。会いたくない。