カンナの花


大学の学食で、わたしは窓際のテーブル席に掛けていた。
正面には親友カンナが座っている。夏の初めの、とある午後。


「びっくりだよね。相手は会社の人で、シングルマザーだったの。
考えてもみなかったよ。自分の父親が不倫するなんて。」


ちくりちくりと、カンナの言葉が胸に刺さる。


「発覚した時はまさに修羅場でさ。

お母さんは殴られるし、それを見て泣いてたらうちもぶたれたし。

お兄ちゃんはお父さんと殴り合いになって歯が折れた。うちは玄関周り這いつくばって兄ちゃんの歯を探してた。」


カンナは自嘲気味に笑いながらそう言ったけれども、わたしは全然笑えなかった。


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