カンナの花
3.白い泡と黒い水
*
木曜日。かんなとお茶の約束をした木曜日。
3限を終えて外に出ると真上から太陽が照りつけた。教習所に入校した、あの日に似ていると思った。
あの日はまだ彼のこと知らなかったな。
と思ってから、自分はまだ引きずっているのかとあきれた。
彼のことを考えたって何にもならない。もうしばらく連絡すら取ってないし、取る気もない。今は、たまにwahooのサイトで名前を目にするだけ。
「しまざき! お待たせ!」
「かんなおはよう」
黄色いワンピースにターコイズのサンダル。今日のかんなは南国風だった。
「行こう。こっち。」
うちの学生がよく行くコーヒー屋の2軒奥に、ひっそりと違うコーヒー屋があった。半地下になっていて、そこにあるとわかっていないとなかなか入りづらいような、そんなお店。わたしたちにはうってつけだった。
「トヤラ珈琲の裏にこんなとこあったなんて」
「ね。びっくりだよね。いいにおいしてたから気になったんだよねぇ。あ、注文ですか、はい決まりました。えぇと、うちは〜…そうですねぇ、何がオススメですか。そうですか、じゃあエスプレッソで」
何が決まりました、だ。おすすめなんか聞いちゃって、ノープランじゃねぇか、とつっこみたかったがこらえた。
「わたしはウインナコーヒーで」