カンナの花
「お待たせいたしました。エスプレッソの方」
「うちです」
「こちらウインナコーヒーになります。ケーキの方ただ今お持ちします。」
わたしの前に生クリームの山が乗った小さなボールが来た。
「セルフかい。変なの。」
「どういうことこれ?」
「ウインナコーヒーって、コーヒーに生クリーム乗るわけじゃん。」
「うん。」
「ここセルフ乗せみたい。うけるね。」
「あぁ! そういうことなのかこれ。うけるね!」
調子に乗って一気に乗せようとして、溢れそうになってしまった。尋常な量じゃない。
「お待たせいたしました。かぼちゃケーキになります。」
「はい、はい、うちです。」
けっこうヘビー級のケーキが来た。かんなは余裕の微笑みでメスを入れていく。生クリームでびびっているわたしにはあのケーキは太刀打ちできないなと思った。
この店は何でもヘビー級か? かといって大衆感はまったくなく、おしゃれな店内だった。
「かんなのお兄ちゃんってさ、俊さんっていうんだっけ」
「そ。上が俊で下は純って絶対ふざけてるでしょ。」
「聞き分けるの難しそう。家だとなんて呼ばれてんの?」
「お兄ちゃんと純〜、かな。お兄ちゃんはお兄ちゃんだから案外住み分けてるよ。」