カンナの花


かんなが世界観にこだわるのも無理はない。彼女はクリエイター気質で、なんでも作れてしまう。
将来だって、何かを作ることに関わろうと、目論見があるのは知っていた。何の職業につきたいのかは教えてくれないけれど。


「でもある時、そうだ、芸名作っちゃえと思って。」

「お、おぅ。芸名。」


まさか芸能界に行きたいのか?


「ペンネームって言う方がしっくりくるかな? まぁでも、独立したら『なんとかかんな』に改名するって決めてから、ずいぶん気が楽になった。
気に入らないなら、自分で作っちゃえばいいって、いつも自分が言っていることだったって思って。」


そう、かんなは強い。
気に入らない時は本気でぶつかって、自分の世界を作る。
例えば自分を取り巻く環境が彼女の正義感と"かわいい"に反した時、彼女は作り始める。自分が過ごしやすい環境を。


本人曰く、高校に入った時はとても緊張して、その後しばらくその体質を封じ込めていたと言う。
だからうつになったんじゃないかとわたしは踏んでいる。


「うちの誕生花、カンナなんだ。」

「へぇ、そうなの?!」

「そう。だから名字を文字って、かんなって名乗ってる。カンナの花言葉、知ってる?」

わたしは首を横に振った。

かんなは生クリームをすくって舐めとった。舞妓さんのように赤いリップの中に、クリームが吸いこまれていく。


< 35 / 44 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop