カンナの花
そうそう。仲はいいの。
だから、よく話すの。
お父さんが帰ってくるのを待ちながら、お母さんは晩酌をして、わたしは隣でおやつを食べて。
小1時間は余裕で話すの。
ねぇかんな。お母さんはかんなの気持ちがよくわかるって言ったんだ。あなたに直接言えないのが苦しいよ。あなたの話、本当は親にもしない方がよかったよね。でもね、許して。うちのお母さん絶対誰にも言わないし、わたしはあなたの話をひとりで抱えているのが辛かった。
かんなはうちの母親もよく知っている。高校からの友達だもの。保護者会の度、お互いの親にも会っているから。
その、しまざきのお母さんはね? かんなの食欲、じゃなかった、いや、食欲も、気持ちも、よくわかるんだって。
うちのお母さんも急に絶食ダイエット始めて、たまに爆発してうんと食べるから。
いやいやいや、そっちじゃない。
うちのお母さんのお父さんもね、浮気、してたんだって。
ねぇ、きのう初めて知ったんだよ。わたし、また抱えきれない話を聞いちゃったよ。なんてことなんだ。物心つく前に亡くなった、遺影でしか顔を知らない、あの、おじいちゃんが、浮気?
おじいちゃんという存在への憧れとか夢とか想像とか、全部打ち砕かれた気持ち。
ねぇ、英治さん。あなたは今何をしている? こんな話、できるとしたら、あなたしかいない。