カンナの花


うつを発症したのは高校2年生の頃。


2年の後期になって学校を休みがちになり、それでも修学旅行には行こうと言っていたある日、

「うち、うつなんだ」

と告白された。

ちょっぴり、今日の光景と被らないこともない。


あの時は、彼女に何がのしかかっているのか、全然知らなかったな、と今さらながら思う。


「うちはさ、前も言ったけど、この学校に来るつもり、最初は無かったんだ。

高校受験の前に、突然、お父さんから私立は行かせられないって言われて。」


小学校からずっと某私立の系列校に通っていた彼女としては当然、そのまま上まで行くつもりというか、その私学に行くために下から入ったのだろう。


彼女の兄貴もそうだ。
今は大学院の2年で、就活を終えたばかりの彼女の兄貴は、下からエレベーターで某私大に入り、今の院にいる。


「それ言われた時ほんと悲しくて。突然なのに、なぜなのか理由も教えてくれなかったから、意味がわからなくて。」


ずっと同じ学校で同じような道を辿って、大好きな兄貴の背中を追っていたカンナにとって、それはいかばかりの衝撃だったのだろうか。
わたしにはわかりかねる。


私立は校風が確立されているし、その世界が好きでそこにいたものにとって、離れることは悲しくて仕方ないのだろうな…程度しか想像できない自分が虚しくなった。


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