カンナの花


2年くらい前。カンナも状態は良くなかったけれど、そう言えばお母さんも調子悪いみたいなこと、カンナ言っていたよな。


更年期のうつみたいって言っていたけれど、大好きなパパの浮気に気づいてしまった頃ではないか。


「次の日お兄ちゃんと近所の公園で話してさ。

お父さんはどっちのことも愛してるって言ったらしいんだけど…

お兄ちゃんさ、自分はまだ愛なんて語れたもんじゃないけど、どっちも愛してるなんて気持ち悪いし意味がわからないって言って、お父さん全否定。
お兄ちゃんうちより潔癖だからさ。」


優しい優しいカンナのパパ。
うつながらも大学に合格した娘の入学式には、いいカメラを持って来て、とっても嬉しそうにシャッターを切っていたっけ。


優しいからこそ、お人好しで優柔不断なのだろうか。
子持ちシングルマザーが捨て置けなかったのだろうか。


また、そんな父を見て、お兄ちゃんの方はどんどん潔癖を極めてしまうだろうな、とも思った。


「お母さんは、うちとお兄ちゃんも、お父さんと普通にやってほしいって言ってて。

お兄ちゃんはお父さんのこと、ほんっとうに許せないみたいなんだけど、でも普通にしてあげなきゃお母さんが悲しむからさ。」


「うん…。」


「もう浮気は蹴りついたから。それはよかったんだけど。

相手の人は田舎に帰ったし、うちのお父さんも会社辞めた。」


「え!」


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