あたしだけを愛しなさい
引きつりそうな顔で無理やり笑う。
でも東くんはそんなあたしの気を知ってか知らずか。
「へぇ…。いい度胸してんだね」
あたし、人より大分沸点低いのに。
だんだんとイライラさせてくる。
それでも自分が悪いから、となんとか怒りを抑えようとするものの東くんはあたしの優しさすら蹴飛ばしやがった。
「まぁ、俺の言うこと聞いてよ?てか聞けよ。これ命令」
……ダメだ。
あたし、これ以上我慢できない。
あれだけ我慢したんだからもういいでしょう…。
いまだ掴まれている手をベリッと引きはがす。
「………命令?ふざけんじゃないわよ。あたしに命令とか何様のつもり?」
そして若干引きはがす時に痛かった手を隠すように腕を組み、東くんを見下す。
うん、学校1とか騒がれてる男見下すの最高。
でも東くんは少々じゃへこまない様で。
「何って…。俺様だけど?俺が世界の中心じゃん?」
ベッドの上で頬杖を軽く付きながら、ニヤリとあたしを見上げてくる。
………さらにあたしはイライラが増す。
それを吹き飛ばすかのように鼻で笑い。
「はっ?あんたが世界の中心とか、この世界滅びるんじゃない?なに勘違いしてんの?あたし中心に回らず、どう世界が回っていくって言うのよ」
あたしがこうい言うと、一瞬東くんはポカンとしたものの、次にはランランと輝いている目を向けてくる。
「……なに?」
「………なんか、世界に色がついた」
「……は?」
東くんって…噂じゃすっごい頭いいんでしょ?
なんか今の発言バカそのものなんだけど。
「……なんか、俺にそんなこと言ってくるやつなんて初めてで。世界変ったわ」
……本当は頭すっごい弱いんじゃないんだろうか。
さっきよりもさらに輝きが増した目であたしを見てくる。
「……そんなんで世界変わるとか、ずいぶん安い世界だったことで」
本音をぽつりと漏らせば、東くんは……純粋におもちゃを与えられて喜ぶ子供のような表情をした。