あたしだけを愛しなさい






あたしはこの時、本気で男の脳内を心配した。







「……どうしたの、大丈夫?」







言ってることは"契約"というわけのわからないものなのに、それでもこの男はなぜか期待の満ち溢れた目をしていて。







ちょっと待て。







この短時間で何があった?






何が変わった?








「……あ!東くん、背中打った時に頭も打ったんじゃない!?今すぐ病院行ったほうがいいよ!」






頭打って脳内出血してて、多少脳の機能がおかしくなっているんだろう。







うん、そうとしか思えない。






でも東くんは…「そんなことより」と、結構本気で心配したあたしの言葉をスルーしてしまった。





………せめて何か反応してよ。





「あのさ、って、キャ!」






さらにあたしが言葉をつなごうとしたとき、何の前触れもなく東くんがあたしの腕を引っ張って、自分の寝転がっているベッドへと引きづり込んだ。







そのまま東くんへと激突し、頭を思いっきり打った。







「いった!」





……脳細胞減ったらどうしてくれるのよ!








そんなことを思って、頭をさすろうとするけど……、その手を東くんに掴まれてしまった。







……え?






と思った時には。





またグイッと引っ張られて、今度は軽くではあるけども鼻に何か当たった。






痛いって!と心の中で嘆いたとき、気づいた。ふわりと感じる香りと、温かな熱に。







そして背中にも感じる温もり。






あれ?







あたし、抱きしめられてる?






数秒経って、自分がいま何をされたか理解した。







え、ちょ、ちょ、ちょ。





何してくれちゃってんの。




何で抱きしめられてるの、あたしは。








「あ、東くん?」






そしてこのまま放置という何とも形容しがたい状況。












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