psi 力ある者 愛の行方 


「未知、返事って何?」

事情を良く知らない陸が、背中から訊ねてくる。
その問いに私は口ごもる。

「俺、気にするなって言ったけどさ。それにしたって」

目の前の泉は、まるで陸の声など聞こえていないかのような振る舞いで、私の肩を掴んだまま、ぷくっとほっぺを膨らませた。

なんて言ったらいいんだろう……。
力ある者同士は、愛し合っちゃいけない。
そう簡潔に言えたら一番いいのだけれど……。

とりあえず、力ある者なのか一般人なのか。
判断がつくまでは黒谷同様、泉とも距離を置いた方がいいよね。

「あのね。泉――――…」
「ちょっと待って! 心の準備が」

ちゃんとしなきゃと思って私が口を開くと、右手を心臓に当て、左手で私の言葉を制する。

「ここじゃなんだから、あっち行こう」

持っていた箸を奪われ、それを机に置くと私の手を引き立ち上がらせる。
それからまた陸のことを一瞥した。
その視線は、何故だか冷たくて、泉らしからぬ表情だ。

「ね、待ってよ。ちょっと――――」

食事と睡魔を邪魔されるも、抵抗など出来ないほどの強引さ。
戸惑う私を無視して、図書室から連れ出されてしまう。
そんな姿を、陸がなんとも言えない表情で見送っていた。


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