psi 力ある者 愛の行方
「血が繋がっていないって。どういうことか解る?」
硬い表情のまま、泉は疑問を投げかけてくる。
「知らないっ」
怒りにムカムカしている私は、プイッと横を向き、投げやりに言い返した。
もう、勝手にしてよ。
この状況を放棄した私に、泉の冷静な声がぶつけられた。
「姉弟でも愛し合えるってことだよ―――――」
「――――っ?! 何言い出すのっ!」
予想もしなかった言葉に驚愕した。
「りくは……陸は、弟なのよ。家族なのっ。変な事言わないでっ!!」
吐き捨てるようにしても屈することなく、泉は更に付け加えてくる。
「未知がそう思っていても。あいつは、未知をそうは見ていない」
開いた口が塞がらない。とはこういうことを言うのだと、私は今実体験している。
泉の言うことに、少しも現実味を感じられない。
怒りを通り越し、呆れてしまうほどだ。
私は言葉を失くしたまま、呆然と泉を見ていた。
「俺には、未知を見るあいつの目が家族を見ている目には見えない。未知を見るあいつの目は、好きなやつを見ている目だ―――――」
っ!!
気がつけば、弾ける様な音が廊下に響いていた。
私の掌は、ジンジンとし。
泉の左頬は、薄っすらと赤く染まっていた。
数秒の時間が止まった。
「……ごめんな……さい……」
あまりの事とはいえ、泉をぶってしまった。
そんな自分自身に驚きを隠せない。
泉は、ぶたれてもなお真っ直ぐ私を見つめ目を逸らさない。
私は慌てて謝り、ジワジワと血流が流れる右手をぎゅっと握り俯く。
「ねぇ、未知。俺、解るんだよ。未知の事を好きな俺だから、解るんだ。解っちゃうんだよ――――…」
今にも泣き出しそうに震える泉の声。
哀しみを纏ったその声が、耳の奥に住み着いて離れない――――。