psi 力ある者 愛の行方
真っ直ぐ教室へは戻らず、片手にはお弁当箱をぶら下げ、フラフラと廊下を歩いていた。
残しちゃってごめんなさい。
お母さんの顔を思い出し、心の中で謝る。
それと同時に陸の顔も一緒に浮かんできて、よく解らない感情が私をかき乱していった。
泉の言葉に動揺している。
そんなわけないって、笑って誤魔化すことだって出来たのに。
あまりに泉の目が真剣だったから。
私を想う感情を真っ直ぐにぶつけられすぎたから。
言葉を失ってしまった……。
私、泉をぶってしまった。
まだ少し感触の残る掌を見て、心に痛みが走る。
あんな風に感情的になってしまうなんて、駄目じゃない。
もっと冷静にならなきゃ。
心をコントロールできなきゃ、力だって制御できない。
そう思った矢先だった――――…
「惣領さん」
泉に言われたことで、頭の中がいっぱいだった。
だから、少しも気がつかなかったんだ。
ほんの数メートル前に立ちふさがっている人物に、気付けなかったんだ。
ハッとして顔を上げた先には、腕を組み不適な笑いを浮かべる黒谷の姿があった。
「黒谷……さん……」
「陸君と仲良くランチ中に、泉君とも逢引? いい気なもんね」
粘りつくような言い方で、私を睨む。