psi 力ある者 愛の行方 


帰りのSHRも済み。
陸は、いつものように私へと声をかけて立ち上がる。

「未知。玄関で待ってるね」

鞄を持ち颯爽と歩き出す背中へ、戸惑いつつも声を掛けた。

「りくっ……」

私の呼びかけに、クルリと振り返り足を止める。

「ごめん……。先に帰ってて……」

理由もなくそう告げると、寂しそうにして傍に来る。
それから、私の肩に手を置いた。

「ねぇ、未知。泉君に何言われたの?」

私よりも背の高い陸が、身長を会わせる様に少し屈み、顔を覗き込んでくる。

「……何も……」

覗き込んで来る瞳から逃げるようにして、私は自分の足元を見た。

泉が何を言ったかなんて、陸に言えるはずなどない。
私だって、あんな風に泉をぶってしまったんだ。
いくら冷静な陸だって、きっと怒るに決まっている。
悲しむに決まっている……。
そんな思い、陸にさせたくなんてない。

「用事があるの……だから……」

余計な心配だろうから、黒谷に呼び出されているとは言わなかった。
私は、足元を見たまま顔を上げられずにいる。

「わかった」

肩に置いていた手を放し、陸は直ぐに背を向け教室を出て行った。

そんな陸の背中を眼で追いながら、うまく接する事のできない自分自身に苛立ちを感じずにはいられなかった。


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