psi 力ある者 愛の行方
気がつけば、体は随分と楽になっていた。
あんなに酷い邪気をぶつけられ、あのまま死んでしまってもおかしくないほどの苦しみだったというのに、今は呼吸も落着き話もできるほどになっていた。
時間の経過と共に、癒えたのだろうか。
それにしては、回復が早い気もする。
胸を貫くほどの痛みも、随分と癒えている。
それでもまだ、上手く体に力が入らない。
手をつき、何とか上半身を起こしてベッドの背に寄りかかった。
「ゴメンね、陸……」
顔色の悪い、心配顔の陸に、もう一度謝り目を伏せた。
「死んじゃうかと思った……」
涙声で顔を歪ませ、起き上がった私を抱き寄せる。
癒えたばかりの身体では、ちゃんと力が入らない。
けれど、それだけじゃない感情に、私は陸の行動を拒めなかった。
涙に鼻をグズらせ、良かったと何度も耳元で漏らす陸を、拒む事ができない。
抱きしめてくる腕を、無碍に解くことなんてできなかった。
この状況は、姉弟という枠を踏み外しているのだろうか。
陸に抱きしめられているなんて、泉が見たらきっと怒るだろうな。
いや、落ち込んで泣いたりして。
私の身体を心配している陸とは対照的に、思考はとても冷静なものだった。
泉が言っていた血の繋がりが頭に浮かんでも、あの時のように動揺することもなく。
無事でよかったと抱きしめてくる陸を、素直に受け入れている。