psi 力ある者 愛の行方
孤独な能力者
―――― 孤独な能力者 ――――
授業開始のベルが鳴り、みんなが席に着き始めた。
「惣領。またな」
教室の前方で話し込んでいた泉が、満面の笑みで私に挨拶をして隣のクラスへ戻っていった。
「またなって……」
呆れた顔で見送ると、やっぱり刺さる痛い視線。
この視線の先を辿らなくても、黒谷が今どんな顔をして私を睨んでいるのか容易に想像できるというもの。
いくらそんな目で敵意を剥き出しにされても、どうしようもない事なのに。
私が泉の事を、無碍にでも突き放せば納得するのだろうか。
というか、そこまでしなければ納得できないのだろうか。
女の嫉妬というものは、本当に面倒だ。
そんなに泉の事が気に入っているのなら、黒谷も泉が私へしているようにすればいい。
泉がこのクラスへやってくる前に、向こうへ行って話しかければいい。
そうすれば、泉が私に話しかけてくることも、近づくこともないだろうに。
気のいい、泉の事だ。
黒谷とも仲良く、話くらいはするだろう。
自分からは何も行動しない黒谷の傲慢さに、辟易してしまう。
右耳の裏にある痣に触れながら、私はそんな物思いにふける。
痣に触れたことによって思考は、また力のことへと変わっていった。