psi 力ある者 愛の行方 


玄関へ行き、靴を履く。
つま先をトントンと鳴らし、私は赤い傘へ手を伸ばした。

「傘は、ひとつでいいよ」

先に立つ陸が、ブルーの傘を手に取り言い、玄関のドアを開けて降りしきる雨に向かってパッとそれを広げた。

瞳が さあ。と促すように私を見る。

少しの戸惑いを抱えたまま、私はそのブルーの中へと入っていった。

ドアを閉め、二人ひとつの傘の下。
傘を打つ雨の音。
並んで歩く靴の音。
ビシャビシャと雨水を蹴るようにして進んでいく。

私の肩先に、雨が当たる。
それを見て、陸の手が腰に回った。
その手が、濡れないように、と私を引き寄せる。

二人だけになった時。
陸は、まるで恋人のように私を扱う。
その行為は、あまりに自然だった。

今のように腰に手を当てるのも。
手を繋ぐのも。
肩を抱き寄せるのも……。

頭の中では、いけな、と何度も思考が訴えかけてくる。
泉の言葉も脳裏をよぎっている。

解っている。
いくらなんでも、この年頃の姉弟がすることじゃない。

解っている……。

なのに、身体は拒絶するどころかそれをすんなりと受け入れ、心は安らぎさえ感じていた。

この感情は、いったい何?
私は、どうかしてしまったの……。

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