psi 力ある者 愛の行方
葛藤する私とは裏腹に、二人でいるときの陸は、幸せそうな笑顔を見せていた。
その笑顔が、今の私には何よりの安心剤になっていた。
降りしきる雨が、二人の行為を隠すように、グレーのベールで多い尽くす。
暗く色濃く、その中に隠れてしまえというように。
誰にも見られることなどない、と言うように。
酒屋で父の好きなビールを買い込み、五分ほどの帰り道。
陸の右手に握られたビニール袋。
ビールの入ったそれが、雨音しかしない住宅街にシャカシャカと小さな音を立てる。
私の左手には、二人を雨から遮るブルーの傘が握られている。
そして、残った互いの手は繋っていた。
握った手の優しさと温もり。
脈打つ音さえ感じられるほど。
「あと……どのくらいで雨は止んじゃうんだろう……」
まるで、いつまでも振り続けてと願うように、陸が厚い雲を見てつぶやく。
この行為を隠すように降り続けて欲しい、とその瞳が望んでいる。
明るく全てを照らす夏は、もう目の前まで来ているのに――――。