psi 力ある者 愛の行方
無言のまま、また流れて行く時。
その時の中で、泉の感情に変化が現れだした。
悲しみに染まっていた心は、いつしか私を想う感情になり。
温かくて、優しくて、切なさを伴った感情に染まっていった。
痛いくらいに私へと向けるその愛情に、胸が締め付けられていく。
「ねぇ、……未知」
躊躇うように呼びかけ、握っていたカーテンをゆっくりと開ける。
現れた泉の姿には、愛しむような表情が浮んでいた。
「あいつのことが……好きなの? ……弟としてじゃなくて……好きになっちゃったの?」
問う疑問の答えに怯えながらも、訊かずにはいられない。
そんな風に、泉の声は震えていた。
引き攣ったような顔と揺れる瞳で、ベッドに座ったままの私を見つめている。
「わから……ない……」
私は、小さく首を横に振った。
俯き目を伏せ、揺れるその瞳から逃れた。
私は、自分のことなのに、何一つわからないままだった。
曖昧な感情の中、ふわふわと浮遊しているだけで、居心地のいい場所で安穏とした時を刻むばかり。
「未知が、あいつを選んだ理由がわからないんだ」
ゆっくりと、言葉を探すように泉はつぶやく。
「毎朝の席とりも、屋上で一緒に食べた弁当も、校門まで歩いた放課後も。一緒にマックへ行った事も。俺は、スゲー嬉しかったし。未知も笑顔を見せてくれてた。……急にした告白で怒らせちゃったのもあったけど……。それでも、未知は……」
泉が所在なさげにポケットに引っ掛ける親指は、いつもの癖。
私は、そのしぐさを眺め、そして俯く。
泉の顔を、見ることができない。