psi 力ある者 愛の行方 


温かくて、大きな泉の手。
優しく頬に手を当てたまま、泉は願うようにつぶやいた。

「未知……。元に戻ろう……?」

元に……戻る……?

「あいつが来る前の俺たちに。あいつが来る前の未知に」

陸が来る前の私に……戻る……。

それは、呪文のような囁きだった。

頬に当てた手から伝わる愛。
愛しむように見つめる眼差し。

見つめあったままの空間に、授業終了を知らせるベルが鳴り響く。
少しずつざわつき始める校内。

それでも、泉の手はそのままだった。
瞳もそれる事はない。


愛しい 愛しい 愛おしい……。


心が訴えかけてくる。

陸といる自分に安穏としながら、以前の自分に戻る事を望む心。
気持ちがグラグラと平衡を失い、どっちへ傾いているのかも解らなくなっていた。

「あいつから離れた方がいい。あいつの傍にずっといたら、未知が消えちゃいそうで。気が付かないうちに消えちゃそうで……。怖いんだよ……」

泉は震える声でそう訴えかけると、大きな身体で私を包みこんできた。


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