psi 力ある者 愛の行方 


陸は、怒りを露にしたまま泉を睨み続けている。
それに対抗するように、泉も目を逸らさない。

緊迫する空気の中、私は固まったまま身動きができないままだった。

保健室の外では、二、三人の女子がキャラキャラと小高い声を上げて通り過ぎていき、ここの空気に少しもそぐわない黄色い笑い声があまりに不自然だった。

その声が、遠く小さくなった頃。

「未知。行こうっ」

床に倒れたままの泉を無視して、陸がベッドに座り固まったままの私へと手を差し出す。
陸に恐怖感を抱いている私は、戸惑い怯えた顔をしたまま反応することができずにいた。
そのままの顔で、倒れたままの泉を見れば、口角を上げて怒りとも悲しみとも付かない表情をしている。

「いずみ……」

差し出された陸の手をとらず、倒れたままの泉を起こそうと私は体を動かした。

「未知っ!!」

そこへ、私の行動を止めるように、陸の怒りを含んだ声が浴びせられる。
その叫び声にビクリとして、泉を助け起こそうとした動きを止めた。

泉は、ベッドに手をつき自らの力で上体を起こしている。
そんな泉の横をすり抜け、陸の手が私の手を掴んだ。

ぎゅっと握り、私は強引に保健室から連れ出されてしまう。

引きずられる様にしながらも振り返った先では、泉がベッドに腰掛け、項垂れたまま膝の上で拳を握り締めていた。


< 134 / 176 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop