psi 力ある者 愛の行方
俯いたままの私を、少しだけ陸が覗き込む。
そうなのかもしれない。
陸の言う通りなのかもしれない。
泉に好意を抱くことができていたなら、痣を見つける以前にそうなっていたはず。
なのに、痣を理由に。
陸の存在を理由に。
フラフラと今まできてしまった。
「未知は、泉君の感情に惑わされているだけなんだよ……」
陸が諭すようにして語りかけてくる。
その言葉に俯いていた顔を上げると、優しく穏やかな笑みが迎えてくれた。
「俺がいるよ。未知には、俺がいるんだから」
膝の上でスカートを握っていた両手の上に、陸が自分の手を重ねてくる。
包み込むようにして、握ってくる。
愛しそうに私を見る瞳が、夏の日差しに輝いて見えた。
その後、髪を撫で背に手を回すと、幼い子供へするようにぽんぽんとあやして抱きしめてくる。
陸の温もりに。
抱きしめてくる腕に。
朝から感じていた偏頭痛も吐き気も。
泉から流れ込んできた痛いほどの感情も。
陸を怖いと思ってしまった事も。
全てが遠い夢のように、霞んで消えて行った。
深い眠りに入る瞬間のように、私はまたこの腕の中で浮遊してしまう――――…。