psi 力ある者 愛の行方

「俺、生まれて直に捨てられてたんだって。だから誕生日も、未知に言ったやつが本当かどうかわからない。母さん、子供ができないらしくて。俺の事を凄く欲しがったみたい。死んじゃった父さんもそれに反対しなかった。おかげで俺は、神谷の家で育ち暮らしていくことができた。それを知ったのは、つい最近。再婚話が出始めた頃。神谷の家に父さんが来てて、俺もタイミング悪いみたいでさ、コソコソ話してるのを聞いちゃったんだよね」

浮かべた笑いは、今まで気付きもせずにきた自分を笑ってるみたいだった。

「最初はさ、理解したくないっていうか。とにかく黙っていられた事や、今まで知りもしないで当たり前に暮らしてきた自分にスゲームカついてた。けど、ムカついたって何したって、今の現実は変えられない。性格がどっちにも似てないことも、顔つきが似てない事も、もうどうしようもない」

どっちかって言ったら、俺と未知の方が雰囲気とか似てるよな。なんて、少し笑う陸。

「母さんと父さんは、今も俺はこのことを知らないって思ってる。だから、気を遣ってるのか一度もそんなこと口にしないんだ」

そうだったんだ。
だから陸は、最初家に来た時、ぶっきら棒で冷たい感じがしたんだ。
自分の生い立ちを知ったばかりで、心の整理がついていなかったんだね。

「母さんが再婚してくれて良かった」

辛い過去を吹っ切るように、陸が笑顔で私を見る。

「俺さ、誰とも血の繋がりないけど。本当の家族がどんな人たちなのか知らないけど。そんなのもう、どうでもいいんだ。だって、未知に出逢えたから……。だから、今はそんな過去もこの為にあったんだって思える」

陸は、また愛しいという表情で、優しく目を細めて私を見つめる。