psi 力ある者 愛の行方
翻弄される
―――― 翻弄される ――――
放課後。
授業道具を詰め込んだ鞄を手に持ち、教室を後にしようとした時だった。
「キレイで頭がいい人は、モテていいよねぇ~」
嘲るように、嫌味な台詞を向けられた。
当然それを言ったのは、黒谷慧しかいない。
数名の仲間に囲まれた彼女は私を挑発し、なめるような視線で見ている。
そんな黒谷の視線を、メガネの奥から真正面で受け止める。
けれど、争う気などさらさらない。
無駄な争いごとに感情を昂らせても、自分が苦しくなるだけだ。
「バイバイ、黒谷さん。また、明日ね」
睨みつける黒谷へ、飛び切りの笑顔を向けてその横をすり抜ける。
余裕の態度が気に入らないのか、黒谷は既に教室から遠ざかってしまった私の背に向かって、バカにしてっ! と声を荒げているのが聞こえた。
いちいち絡んでこられても、面倒臭いだけ。
私にそんなパワーを使うくらいなら、泉に使えばいいのに。
心の中で毒づき、玄関へ向かって廊下を歩いていくと、もう一人面倒な奴が現れた。
「惣領っ」
タンタンと軽い足取りで私の傍へやって来たのは、もちろん泉絖太だ。
「何?」
私は外履きを手に取り、泉を振り返ることもしない。
「何って事ないじゃん。一緒に帰ろうよ」