psi 力ある者 愛の行方
楽しそうな声音に無視しきれずに仕方なく振り返ると、満面の笑みで私を見ている。
そんな泉へ、当然のことながら呆れ返ってしまう。
「あのさ。何で私が一緒に――――」
――――帰らなきゃいけないの?
そう告げるはずだったのだけれど、最後の台詞は泉に届いていなかった。
泉絖太は、いつの間にか私の前から姿を消していたからだ。
消していた。
といっても、この世から消えたわけでも、瞬間移動して遠くへ行ってしまったわけでもない。
ただ、単に。
ひとつ隣、私の下駄箱とは背中合わせの裏側にある自分の下駄箱へと人の話も最後まで聞かずに行ってしまっただけのこと。
クラスが違うため、下駄箱が違うのだから仕方ないのだけれど、人の話は最後まで聞くべきでしょうよ。
それができないような奴は放っといて、私はさっさと靴を履き替え、玄関を出て歩き出す。
すると、慌てたように泉が追い掛けてきた。
「先に行くなよっ」
文句を言いながらも、泉はしっかり私の隣に並んだ。
「一緒に帰るなんて言ってない」
冷たい一言を返したけれど、泉はそんなことなど物ともしない。
「そうだっけ?」
などと、とぼけた顔をしている始末だ。
泉の人懐っこさは、天下一品だ。
私が冷たくあしらっても、全く通じない……。
こんな犬みたいにニコニコ尻尾巻いてそばに寄られたら、大概の女子は心を揺さぶられるだろう。
ただし、私を除いては。
隣に並ぶ泉に構うことなく、私は自分のペースで歩いていく。