psi 力ある者 愛の行方
「この小刀には、力がこめられている。痕跡は、一切残らない。これで、あの子を――――……」
できない。
できないよ……。
そんなこと、どうしてできるっていうの。
愛しているの。
陸を愛してる。
本当の姉弟だと分っても尚、胸の奥が締め付けられるほどに陸を愛している。
そんな相手に切っ先を向けろと?
殺めろと?
「だったら……。だったら私がっ――――」
私が陸の代わりに、自らを。
「未知……」
祖母は、私の言わんとすることを直ぐに悟り、力なく首を横に振る。
「自ら命を絶つことでは、何も変わらないんだよ。陸は救われんのよ。もし、未知。お前がそうしたとしても、陸の症状は変わらないだろう。寧ろ、未知がいなくなったあと、陸がどれほどの体力的、精神的苦痛を受け続けるか……」
「そんな……」
諦めておくれ、と祖母が私を諭す。
悲しい瞳で願う。
許しておくれ、と頭を下げる。
手渡された小刀は、必要以上に重く。
これから起きる悲劇に、無言の重圧を掛けている気がした――――。