psi 力ある者 愛の行方
決断と別れ
―――― 決断と別れ ――――
気がつけば、そこは元の場所だった。
祖母の姿は無く、かわりに仏壇には遺影がある。
畳には写真立てが転り、窓の外は暗闇を映し、本棚も元通りだった。
線香の香りだけが、この静かな空間を満たしている。
まるで、夢でも見ていたかのよう。
「おばあ……ちゃん」
小さくつぶやき、転がる写真立てを手にする。
けれど、そこからはもう何も感じ取る事はできなかった。
中に収まっていたはずの切れ端も無い。
あるのは、手に握らされた小刀だけ。
その重みと存在に、夢ではなく現実なんだということを思い知らされる。
ギュッと小刀を握り締め、写真立てを元のように仏壇へと飾る。
しばらくの間、祖母の写真を眺めていた。
ギュッとその小刀を握り締め、祖母が言った言葉を反芻する。
そうして、深く呼吸をした。
「お祖母ちゃん……。ごめんね――――」
私は、ある決意を胸に秘めた。
祖母との約束は、守れそうに無い。
けれど、こうする他無いの。
こうする以外、自らを納得させることなど、できないだろうから……。