psi 力ある者 愛の行方
小刀を手に、自室へ戻る。
陸の部屋では、多分お母さんが陸につきっ切りで疲れた顔をしているだろう。
陸自信も、体調の悪さに体力が消耗しきっているはず。
私は勉強机の抽斗を開け、奥深くに一旦小刀を隠した。
その後、陸の部屋へ向かう。
小さくノックをしてドアを開けると、陸のベッドへ疲れ寄りかかるお母さんの姿があった。
「少し、休んで。今日は、私が看てるから」
お母さんは、徹夜続きの看病にやつれた表情を浮かべながらも躊躇っている。
大切な息子が弱っていくさまを、ずっとみ続けているのだから仕方ない。
「お母さんまで倒れたら、お父さん心配で仕事も手につかなくなっちゃうよ」
父の事を持ち出すと、ようやく首を縦に振ってくれた。
お母さんが部屋を出て行く姿を確認してから、荒い呼吸を続け眠る陸へと視線を移す。
とてもやつれた顔。
ベッドの傍に膝をつき、目元にかかる髪を優しく払う。
「ごめんね……陸。……ごめんね」
小さな呟きに、ゆっくりと瞼が持ち上がった。
「み……ち……」
かすれた声で陸が私を呼ぶ。
虚ろな瞳が私を映す。
「お母さんに、少し休んでもらったから。今日は、私がついてるね」
「嬉しい」
素直に喜び、苦しい呼吸に歪んでいた顔を和らげた。