psi 力ある者 愛の行方
もう少ししたら、楽になるからね。
もう少ししたら、元気になるからね……。
悟られないようバリアーを張り、心の中で言葉にする。
自分の体のダルさが、これ以上酷くならないうちに実行してしまおう。
体が思うように動くうちに、衰弱していく陸を一刻も早く救ってあげよう。
ベッドの脇に置かれている、空に近い水差しに目を止める。
「お水、取りに行って来るね」
部屋を出てキッチンへ行き、予備においてあるペットボトルの水を手に取る。
カムフラージュのそれを持ち、一度自分の部屋に戻った。
机の前に座り、抽斗に手をかけ、奥底に入れた小刀を握り締める。
大丈夫。
きっとうまくいく……。
棚に収まるアルバムを手に取り、父と祖母と三人で写る写真を眺める。
「お父さん、今までありがとう。お祖母ちゃん、約束守れなくてごめんね……」
キラキラと笑う二人の写真に向かって語りかけ、アルバムを元のように戻したあと、小刀を隠し持って私は部屋を出た。
父とお母さんの部屋のドアに視線をやり、今は、多分ベッドで休んでいるであろうお母さんにもドア越しに深く頭を下げた。
「ありがとうございました……」