psi 力ある者 愛の行方
「陸、水分摂って」
つらそうな陸の体を支えて、上半身を起こす手伝いをすると苦しそうに呼吸が漏れる。
歪む表情。
ゴメンね、無理させて……。
水差しを口元へ持っていくと、陸がコクリと一口喉に流し込んだ。
「これ……風邪じゃないのかな……。いつ……治るんだろ……」
はあ、はあ、と話の合間に苦しい呼吸をする陸。
「せっかくの夏休みなのに……」
「大丈夫。直ぐに治るから……」
ばれないように、口角を頑張って上げた。
目元を緩め微笑んで見せた。
陸に読み取られないように、悲しみの表情を押し殺した。
「治ったらさ……海……行きたい。未知と……海に……」
「うん、行こう。海……」
「そんで……夜の……海で花火……すんの……」
「うん、花火しよう……。いっぱいいっぱい買って、花火しよう……」
「……祭りも……行きたい。……毎年神社でやってるって……父さんが……教えてくれた……。小さいけど……楽しいって……」
「……うん。お祭りも、行きたいね……」
「未知……浴衣……着なよ……。絶対……よく似合う……」
顔を歪めながらも、必死に陸が笑いかけてくれる。
その顔を、心に焼付けた。
その声を、耳の奥に大切にしまった。