psi 力ある者 愛の行方
「だって、アイツ面倒なんだもん」
「面倒って……」
泉は毒舌なその一言を、少しも悪いと思っていない顔で言ってのけた。
面倒って。
同じ事を感じてたわけ?
なんだか、ちょっとおかしい。
思わず声を上げて笑いそうになったけれど、泉に乗っかると調子に乗りそうなので、ひとまず笑いは心の中に押し留める。
「それって失礼じゃないの?」
自分だってそう思っているくせに、非難の言葉を向けてみた。
「だって、黒谷ってジャイアンみたいじゃん?」
そんな風に言って、泉は同意を求めるような目で見てくる。
それから、閃いたって顔をした。
「あ、女だから。ジャイ子ってところかな?」
なんて、楽しそうな顔で笑い出すんだ。
そんな泉の姿に、私は一瞬呆れてしまった。
あの泉がこんなことを言うなんて。
教室では、いつもみんなに慕われているし。
人の悪口だって、言ってるのを聞いたことがない。
人気者の泉は、人気者であるだけに、人のことを悪く言ったりなんてしないんだ。
でも、今のって凄い毒舌だよね。
そう考えたら、無性におかしくなってきた。
「ぷっ」
私が笑い出すと、泉もつられて笑い出す。
「惣領だって、そう思ってるんだろ?」
イタズラな顔をして、同意を求めるその言葉に冷静さを取り戻す。
「別に、私は……」
笑いを引っ込め口ごもり、はっきりと反論が出来ない。
だって、図星だから。