psi 力ある者 愛の行方
何が言いたいの?
―――― 何が言いたいの? ――――
「ただいまー」
誰も居ない家の中へ声を掛け、直ぐに自室へと引っ込んだ。
鞄を机に置き、制服から部屋着に着替えてドサリとベッドに寝転がり天井を仰ぐ。
クリーム色の天井を見上げながら、さっきまで一緒にいた泉の事を考えてみた。
あの調子でいくと、きっと明日も私の席を陣取ってるんだろうな。
悪気もなく、得意のあの笑顔でニコニコと。
言っとくけど、私をその辺の女子と一緒にしないでもらいたい。
あんたの笑顔で落ちるほど、乙女な心など持合わせていないんだから。
泉のことを振り切るように、勢いをつけて上半身を起こしてベッドから降りた。
父が会社から戻る前に、食事の支度をしなきゃならない。
あ……。
泉のせいでスーパーへ寄って来るのを忘れちゃったじゃん。
いつものペースを乱され、おもわず真っ直ぐ家に帰ってきてしまったのだ。
もう一度出かける気にもなれず、キッチンの冷蔵庫を開けて、あるものでいいか。なんてひとりごちる。
父の帰りは、いつも遅い。
だから、食事は一人で摂ることが多い。
今日も静かな一人の空間で、黙々と箸をすすめながら、リモコンでテレビ番組をクルクルと変えてお笑い番組に少しだけ声を上げて笑った。
後片付けや洗濯物をしまって、少しだけのんびりとしたあとお風呂に入る。
その後、自室に居るとガチャリと玄関で音がした。
父が会社から戻ってきたようだ。
すると、いつもなら真っ直ぐリビングへと向かう足音が、私の部屋へと向かってきた。
コンコン、と部屋のドアが遠慮がちに叩かれる。
「ちょっといいか?」
ノックの音と同じくらい遠慮がちな父の声が呼びかけてきた。
「いいよ」
私は、返事をしてベッドに腰掛た。