psi 力ある者 愛の行方
「お帰り。なに?」
「ただいま。あのな……」
躊躇いがちのその表情を見て、そういえば朝も何か言いたげだったよね? と思い出した。
「なんか、話?」
私が訊くと。
「話って言うか……」
もぞもぞと、どうにもハッキリとしない父の態度。
「どうしたの? なんか、朝からヘンだよ」
今朝のように出がけというわけでもないからなるべく急かすような事はせず、それでも私が指摘すると、躊躇った末にやっと口を開いた。
「あのな、未知。実は、お父さん――――…」
やっと父が口を開いたというのに、リビングで鳴り響くベルが邪魔をする。
家の電話が、けたたましい音を立てて鳴っているんだ。
その音に、父が言葉を飲み込んでしまった。
言いにくい事を言わなきゃいけない。
けれど、電話に遮られた事によって、やっぱり後回しにしよう。
今すぐじゃなくてもいいじゃないか。
そんな風にも取れる仕草で、父はなんとなく頬を引き攣らせている。
「……誰だ、こんな時間に……?」
乱れてもいない髪を触ったあと、話さなくてもいい言い訳が見つかったとでもいうように踵を返してしまった。
そうして、そのまま部屋を出て行こうとする。
「お父さん?」
私は、何の話なの? というように声を掛けたけど、聞こえないふりのまま、鳴り続ける電話の元へと行ってしまった。
「なぁに、あれ?」
泉といい、お父さんといい。
みんな、何を考えてるんだか。
「はぁ~あ」
声に出して言ってから、ゴロリとベッドに寝転がる。
結局、父が言いたかった事がなんだったのか。
それを知るのは、現実に事が起こってからだった――――――。