psi 力ある者 愛の行方 


確かに、黒谷が乗り込んでくることを考えれば、これ以上の面倒が増えるだけだ。

しかたなく、不満ながらもその面倒を避けるため、私は渋々承諾するよりない。

「わかったから。ど・い・て」

不満な顔で条件を呑むと、泉は跳ねるように椅子から立ち上がる。

「やったね」

そして、入れ替わりに席へつく私の耳元にぼそりと囁いた。

「昼休み。屋上な」

条件を受け入れられた泉は、鼻歌交じりに教室の出口へと向かって行き、黒谷たちが固まっている傍まで行くと、交換条件に黒谷の名前を勝手に使った事へのお礼でもするように笑顔を振りまいている。

「黒谷、元気?」

ニコリと極上のスマイルを投げかければ、当然のように黒谷は、頬を真っ赤に染めて嬉しそうにする。
かなり幸せそうな表情だ。

まったく、いい性格してるよ。
結構な自己中男だわ。

泉がこんな奴だって知ったら、みんなどんな反応をするんだろう。
私みたいにひく?

けど、あの容姿だ。
そんなわけないか……。

泉に声を掛けてもらった黒谷の、キャアキャアと騒ぐ黄色い声にまたも私のこめかみがピクつく。

その声、すんごく頭に響く……。

脳髄を超音波か何かで派手に刺激されてるみたいで、とても気分が悪い。
私は、こめかみを指で押さえ、この後やってくる昼休みに憂鬱を覚えた。


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