psi 力ある者 愛の行方
「なぁ、未知……」
「ん?」
父は、物言いたげな顔をしている。
なんだろう?
玄関まで来るっていうのは、何かある?
そう思い、何気なく小首をかしげて父の言葉を待つ。
「あのな……実は、父さん……その……」
なんだか、はっきりとしない父の態度。
口を開きかけては、閉じ。
何かを躊躇っている。
私は学校へ行く時間が気になり腕時計へ目をやり、少し急かすように父へ訊いた。
「どしたの?」
少しだけ強い口調になってしまった問いかけに、父が僅かにひるんだ気がした。
「いや……、なんでもない。いってらっしゃい」
結局、父は何も言わないまま、急かす私を送り出した。
この時、父の様子が少しおかしい事を、私は深く考えていなかった。
「いってきまーす」
そうやって、いつも通りに家を出たんだ。