psi 力ある者 愛の行方
泉の事をこんなにも待ち遠しく感じたのは、一生のうちで多分この一度きりに違いない。
止まぬ心臓の動悸。
左胸に手を当て、何とか抑えようと試みる。
それと同時に募るイラつき。
一緒に帰るなどと人に指をつき付けていた当の泉が、なかなか現れないからだ。
何してるのよっ。
いつもは、頼まれなくたって急に現れるくせに。
早く来てよ。
下駄箱に寄りかかりイライラを表情に出して、私は泉が降りてくるだろう階段の先を睨みつけていた。
腕時計に視線をやり、それからまた階段を見る。
それを何度か繰り返していると、やっと聞こえてきた靴音。
タンタンタンッとリズミカルな軽い足取りが、階段の上から聞こえてきた。
来た。
私は、泉の姿を確認して直ぐ、珍しく声を大にして叫んだ。
「遅いっ!」
「えっ……?!」
大きな声など出すことのない私に、泉は驚き戸惑いの表情を浮かべている。
けれど構う余裕などなく、私の顔は険しいままで、その顔を見た泉は、更に慌てて靴を履き替え急いで傍に来た。
「ごめん……。待たせて……」
ポリポリと頭をかき、首をすくめている。
本当だよっ。という私の言葉は、冷静にならなくてはという思いと一緒に何とか抑え込んだ。