psi 力ある者 愛の行方
行きと同じように、会話のない状況が続いていた。
でも、行きと違うのは。
泉が初めて出会う自分以外の力ある者なのかもしれない。と疑い無言になっているのじゃなく。
好きだと告白され、よく状況が飲み込めないままなぜか心臓がトクトク言っているせい。
なぜ鳴るこの心臓?
右手で胸を押さえ、半歩前を行く泉の背中を見る。
けど、その背中はいつもと変わらないよう。
私は、ただ付かず離れずその背中を追う。
思考は深く考えることを拒否していて、ただ鳴り続ける鼓動に心が首をかしげていた。
繁華街から離れ、裏通りを抜ける。
歩く事数十分。
前を行く泉が、ボソリと独り言を呟いた。
「結構、遠いな……」
何が遠いんだろう? なんて疑問など浮ぶ余地もない私が、黙ってそんな泉に着いて行くと、気が付けば自宅前にたどり着いていた。
見慣れた建物を前に、素の呟きを漏らす。
「あ、私の家……」
「一応、送って来たんだけど。もしかして、わかってなかったの?」
問われて、コクリと小さく頷いた。
「重症だな」
泉の呆れ顔が返ってくる。
「言っとくけど。家の場所知ってるからって、ストーカーとか言うなよ」
「え?」
あ……そうか……。
何にもそんなこと考えてなかった。
泉に言われて、初めてそのことに気が付く。