psi 力ある者 愛の行方
「ねぇ……じゃない。陸」
「ん?」
なんだか慣れないまま名前を呼ぶと、ほんの少し顔が和らいでいる気がした。
「これは、どこにしまう?」
ダンボールの中を指差し訊ねると、陸が私の指の先を覗き見る。
途端――――
「うああっ!!」
大声を出し、慌ててそのダンボールの蓋を閉じた。
「これは、自分で片付けるからいいっ」
照れて焦った顔が私を見る。
口数が少なくて、クールに決めてるその顔は、気取ってるのかと思ってたけど、違うみたい。
「なんだ。そういう顔もできるんじゃない」
大人ぶった表情を一変させ、慌てふためく姿になんだか面白くなってつい笑ってしまった。
「女なのに平気な顔すんなよ」
陸は、膨れた顔のまま恥ずかしそうにしている。
「だって、父親と一緒に暮らしてきたんだよ。悪いけど、パンツくらい見慣れてるから」
子供みたいに膨れた顔が可愛くなって、少しイジワルに言い返した。
私の強気な返答へ、更に言い返してくるかなって思ったら。
「そっか……ごめん……」
しおらしく謝られてしまい、なんだか調子が狂っちゃう……。
父親と二人で暮らしてきた私への気遣いからなのか、また、黙り込んでしまった。
母親と二人で生きてきた彼。
きっと、自分の中にある今までの生活と重なったのかもしれない。