psi 力ある者 愛の行方
「なぁ。何でそんなにいつもつまらなそうな顔してんだよ」
泉が、ふくれた顔のまま私の顔を覗き込んでくる。
「別に。つまらないわけじゃないけど」
そう。
別につまらないわけじゃない。
ただ、余計な繋がりを持ちたくないだけなんだ。
日々平穏に、穏やかに過ごしたいだけのこと。
「でも、楽しそうな顔、見たことない」
今度は、子供のように唇を尖らせる。
コロコロとよく変わる表情だ。
泉が指摘するように、楽しくないわけじゃない。
学校で話すくらいの友達は、それなりにいるし、イジメにあっているわけでもない。
「泉は、いつも楽しそうだよね」
少しばかり嫌味で言ったつもりが、ニコニコとした笑顔が返ってきた。
「でしょー。人生、楽しくいかなきゃ」
どうやら私の嫌味は、少しも通じていないらしい。
鞄の中から教科書やノートを取り出し、机の中へしまっていく。
その後、頬杖をつき窓の外へと視線をやった。
泉はといえば、私と絡むのを諦め、前の席にいる他の男子たちと楽しげに会話をしはじめた。
そのおかげで、黒谷の刺すような視線も私からそれた。