psi 力ある者 愛の行方
キリリとした切れ長の目も。
端正な顔立ちも、想像できないほどの寝ぼけ顔。
開いた目の焦点がなかなか合わず、見下ろす私を通り越したような視線はふらふらしている。
その数秒後。
驚いたように、いきなりバッと起き上がり。
布団を抱きかかえるようにして、窓際にへばり付いてしまった。
「早く起きないと遅刻しちゃうよ」
「え……あ……、そっか。うん……」
まだちゃんと働いていない脳みそで曖昧な返事をしている中、徐々にはっきりしていく意識の中で、やっと今の状況を把握したのか慌てたように叫んだ。
「すっ、直ぐ行くからっ」
真っ赤な顔をして、恥ずかしそうに私を部屋から追い出した。
寝ぼけた姿、見られたくなかったのかな?
ドアの外に出て、思わず苦笑いが零れた。
やっと起きてきた陸を交えての朝御飯。
出来立ての白いご飯とお味噌汁。
今まで、朝はパンだったからとても新鮮な感じがした。
朝食も食べ終わり、椅子から立ち上がると、笑顔と共に詩織さんがお弁当箱を差し出してきた。
「はい。未知ちゃん」
「ありがとう」
人が作ってくれたお弁当なんて、お祖母ちゃんが生きていた時以来だ。
やけに嬉しくて仕方ない。
「はい。陸」
同じように、陸へもお弁当を手渡している。
「うん」
陸は、それだけ言って受け取った。
元々素っ気無いのか、母親に対して距離を置きたい年頃なのか。
昨日、私へしたように短い返事だけ。
もう少しありがたみを感じたほうがいいと思うよ、陸。
なんて、お姉さんぶった思考に苦笑い。