psi 力ある者 愛の行方
野次馬
―――― 野次馬 ――――
その日一日。
休み時間ごとに、陸の周りは人だかりになっていた。
泉同様。
奇麗な顔立ちの陸は、あっという間に女子たちの注目の的というわけだ。
黒谷を筆頭に、自分のことを気に入ってもらいたい女子たちが群がる群がる。
廊下では、他のクラスの女子が教室の中を遠巻きに眺めているくらいだ。
泉に気があったんじゃないの?
呆れた顔で黒谷を見たけど、そんな私になど彼女が気付く事もない。
上気した頬は薄っすら赤く、必死に陸へと向けてなにやら質問攻めをしている。
陸の周りでは、払い除けたくなるほどの、ピンク色のオーラが犇めき合っていた。
そんな女子たちの中に、友達になりたい男子もチラホラ混ざり、陸は人気の動物にでもなったような状態だった。
同じように、当然私へも質問や好奇の目は集まってくる。
けれど、冷静に眼鏡越しに撥ねつけ、私はなるべくその場に居ないようにしていた。
人にあれこれ訊かれ、興味の目で見られるのはけして気分のいいものじゃない。
他人には聞かれたくない事だってあるし、そっとしておいて欲しい気分の時だってある。
喧騒から逃れるように一人で廊下へ出て、クラスから離れた窓の桟に腕をつき寄りかかった。
「陸、平気かな……」
続く青空の向こうを見ながら、自分だけ逃れて来た事にポツリと言葉を漏らした。
そこへ、スッと近寄る影に気付く。
けれど、振り返る間もなく言葉が降って来た。
「誰が平気かだって?」