psi 力ある者 愛の行方
漏らした言葉を聞いている人が居るなどとは思わなくて、驚きに心臓が跳ねた。
ギョッとして振り返った所には、泉が立っていた。
ズボンのポケットに親指を引っ掛け、首を傾げて私を見てる。
ポケットに親指を引っ掛けるの、癖なのかな?
そんな、どうでもいいことが頭をかすめる。
「聞いたよ。朝のあいつ、姉弟なんだって?」
「うん」
噂が広がるのは、本当に早い。
隣のクラスの泉にまで、私たちの情報は筒抜けだ。
「早く言えよな~……」
余計な心配して損した。と付け加えると、泉は私の隣に並び、同じように窓の桟に身体を預け青空を眺めている。
「分ったんだからいいでしょ?」
「またそうやって面倒がる」
だって、本当に面倒なんだもん。
泉、声大きいし。
あの場でそんな説明したら、大声で驚いて。
その声に他の子達まで便乗してきて、餌食になり兼ねないじゃない。
想像しただけで、辟易してくるよ。
「だから、先週バタバタしてたんだ。一緒に帰りたくて教室覗いた時にはいつも居なくてさ」
泉は、子供のように拗ねて甘えた声を出す。
それは、君の常套手段ですか?
そんな風にされても困ります。
すねた泉は、ブツブツといつまでも隣で不満を漏らしている。
そんな彼を放っておいて、ゆっくりと流れる雲を眺めた。
この青い空と流れる雲だけを見ている分には、かなり穏やかなんだけどなぁ。
実際、今うちのクラスに戻ったらなんだかんだと質問攻めの嵐。
鬱陶しい事この上ない。
ずっと、この空のようにゆったりとした時間のままがいいのにな。