psi 力ある者 愛の行方 


「自分だけ静かにメシとかズルイじゃん」

ふてくされたような深い溜息の後、お弁当箱を机の上に置き項垂れている。

「転校生って、本当面倒くさい。色々訊かれてウザイし」

文句を言いながらも、お弁当の蓋を開けて食べ始める。
私は、野次馬たちから一人だけ逃れてここに居る事に、少しの罪悪感を覚える。

「いっぱい、訊かれた?」

申し訳なさを滲ませ訊ねると、口にご飯を放り込み大きく頷く。

「そのうち飽きるとは思ってんだけど。放っておいて欲しい……」

疲れた顔して、二口目を口にした。

「ごめんね」

私が謝ると、もういいよ。とばかりに首を横に振った。

やっぱり、陸一人だけ教室に残して、私だけのうのうとご飯を食べていたのはまずかったよね。
申し訳なさに、自然と気分が暗くなっていった。

「未知のせいじゃない」

落ち込んでいるのを気遣ってか、陸は隣に居る私の顔を真っ直ぐ見て言い切った。
そんな風に言ってくれたことに嬉しさを感じながらも、私は陸の言葉に驚いていた。

陸が口にした私の名前。

未知――――。

初めて、名前で呼ばれたことに嬉しさを感じていたんだ。

今まで私が陸の名前を呼ぶ機会はあっても、逆は何故だかなくて。
今初めて呼ばれたことに、くすぐったさを感じた。

思わず、また自然と笑みが漏れる。
陸が来てから、私ってばなんだかよく笑っている気がするな。


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