psi 力ある者 愛の行方
私が今まで心を許してきたのは、お祖母ちゃんとお父さんだけ。
この力のせいで、人と深く関わる事をずっと避けてきた。
なるべく浅い付き合いの中で、平穏な日常を望んできた。
けれど、家族ができ。
姉弟ができ。
一つ屋根の下で同じ幸せを噛み締めている自分は、不思議なほどに自然体だった。
外では、ツンとしてばかりの私だけれど。
陸の前では、ちゃんと笑ったり、怒ったりできている。
そのことを嬉しいと感じている。
素直に自分の中へ受け入れ、消化している。
私は陸の方へと少し体を向け、キレイに食べ終えた空のお弁当箱を見せる。
「お母さんのお弁当。美味しかったね」
陸に負けないくらい、その単語に愛情を持って言うと、陸がパーッと明るい表情をつくる。
「母さんの料理には、期待してて」
自慢げに、陸が母親を褒めるその顔に、私はうんと頷いた。
「お父さんには、期待しないでね。結構、鈍臭くて天然だから」
私は、冗談を言って笑顔を浮かべた。
すると、陸も調子に乗ってくる。
「知ってる」
肩を揺らして、陸が笑う。
私たちは顔を見合わせ、静かな図書室で声を押さえて笑いあった。
お父さん、これが姉弟のいる楽しさなんだね。
ありがとう。
そして、笑いのネタにしてごめんなさい。
心の中で謝りつつまた、笑い合った。