psi 力ある者 愛の行方 


「娘がいると、こうやって並んでキッチンに立てるのね。なんだか、嬉しいわ」

陸のことに困ったものね。と溜息をつきながらも、お母さんは嬉しそうにまた料理を続ける。

私もお祖母ちゃん以外の人と、こうやってキッチンに立つ事なんて今までなかった。

お父さんは、料理なんて全くしないし。
というか、出来ない。
目玉焼きさえまともに作れないのだ。
タマゴの殻入りを一度出されて、随分歯ごたえのある目玉焼きだね、とチクリ言った事があるくらい。
手伝うなんて言われて横に居られても、邪魔なだけだった。

今は、キッチンにこうして並んでいる事が、お母さんと同じように嬉しくて、お弁当箱も機嫌よく洗える。
そんな私に視線を向けると、お母さんが包丁の手を止める。

「……陸、ツンケンしてるけど。本当は、優しい子なのよ」

解ってね。と言うように苦笑い。
自分の息子の愛想のなさに、申し訳なさそうな顔をしている。

「うん、わかってるよ。陸が優しい子だって、今日も学校で楽しく話もしたし」
「あら? そうなの?」

お母さんは、凄く驚いた顔で私を見る。

「よかった。未知ちゃんと仲良く出来てるのね」

私の話を訊いて、安心した。という様に、その後お母さんは鼻歌交じりに料理を続けていた。

可愛い人。
お父さんが好きになるのもわかるな。


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