psi 力ある者 愛の行方
「ねぇ、未知。最近、元気ないね」
お昼休み。
陸と二人、図書室で過ごす事が多くなっていた。
陸は、私の顔を心配そうに覗き込んでくる。
「そうかな……? テストが近くて気が張ってるのかも」
誤魔化すように浮かべる笑い。
「ふぅん」
陸は、相変わらず深いところまでは追求してこない。
余計なことを執拗に訊かれないのは、本当に助かる。
それとは別に、一緒に暮らすようになり、こうやってお昼を共にするようになって、陸が案外おしゃべりだっていうことに気がついた。
前の学校での事や、引っ越してからも付き合いのある友達の事。
好きな音楽やゲームの話。
聞いて欲しい事が山ほどある。というように陸はよく話をしてくれた。
ただ、本当の父親についてや、自分の小さい頃の話はほとんど口にしなかった。
陸の父親は、陸が中学に上って直ぐの頃、交通事故で亡くなったとお父さんが言っていた。
それ以後、母親と二人援助を受けながら細々と暮らしてきたと。
陸が話したくないのなら、無理に聞きだす必要もない。
聞いて欲しくなったら、自分からそういう機会を作るだろう。
私は、お弁当を食べながら楽しそうにしている陸の話を、うんうんと隣で聞きいていた。
静かなそこは、柔らかい日差しが窓辺から射し込み。
ぽかぽかと食事中に眠気を誘う。
身振り手振りをつけて話しかけながら、時々触れてくる陸の手は、温かくて益々眠りへと誘われて行った。